○東 野炎 立所見而 反見為者 月西渡(四八 柿本人麻呂)
佐佐木隆『万葉集を解読する』では徹底的な用例による検証で外に用例がない訓み方を排除する。それはそう読みたい、そうあってほしいとする訳者の個人的な願望にすぎないとする。かくして権威者の賀茂真淵と追随者の訓み方は一部排除された。
あづま野のけぶりの立てる所見てかへりみすれば月傾きぬ 賀茂真淵以前
東(ひむがし)の野にかぎろひの立つ見えて返り見すれば月傾きぬ 賀茂真淵
ひむがしのぬにかぎろひのたつみえてかへりみすればつきかたぶきぬ 橘千蔭
東の野にかきろひの立つ見えてかへりみすれば月西渡(かたぶ)きぬ 信綱
東の野に炎(かぎろひ)の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ 中西進
東の野らに煙は立つ見えて返り見すれば月傾きぬ 佐佐木隆
東の野らに炎(けぶり)の立つ見えて反り見為(す)れば月西渡きぬ 私訳
私訳は漢字かな表現の選択の恣意をなくす試み。
1 原文の表意の漢字(正訓字)はそのまま生かす。
2 正訓字を別の同訓・同義の漢字に変えない。
3 原文の表音の漢字(万葉仮名)はひら仮名で表記する。
4 万葉仮名の部分は漢字化しない。
参考文献:佐佐木隆『万葉集を解読する』ほか、各万葉集注釈本
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